元ユーべの敏腕スカウトマン、マッテオ・トニョッツィのすべて(デミチェリス)

初めまして!これから不定期でこちらに記事を寄せることになりました、デミチェリスです。

私からは、ユベントス関連の話題のなかでも普段あまり目にすることのない、下部組織やクラブ役員などのトピックを中心に発信していこうと思っています。

みなさま、よろしくお願いします!

 

ではさっそく。今回は、2017年7月から2023年10月までユベントスのスタッフとして活動し「Next Genプロジェクト」の礎を築いた人物でありながらも、これまであまり注目されないままユベントスを離れた敏腕スカウトマン、マッテオ・トニョッツィ氏をご紹介します。

 

現在スペインのグラナダでスポーツディレクター(SD)を務める彼は、サッカー界で多くの注目を集める人物で、その独自の哲学と実績で知られています。

では、トニョッツィ氏のキャリアや哲学、彼が注目する期待の新星たちについて、見ていきましょう。

 


 

 

 

マッテオ・トニョッツィって誰?

[キャリア]
[2017年7月]外国人選手のスカウティング担当として、ユベントスのスタッフ陣に加わる。
[2018年3月]国内外の選手の獲得を計画・実行するスカウティング・マネージャーに就任。
[2022年11月]スカウティング部門の最高責任者に就任。
[2023年10月]ユベントスを退団し、グラナダのSDに就任。

 

マッテオ・トニョッツィ氏とはどのような人物か、簡潔に表すとすれば、「ユベントスが質の高い若手を発掘するための仕事術やスカウティングの仕組みをほぼ0から構築した人物」といえるでしょう。

現在スペインのグラナダでSDを務める37歳のトニョッツィ氏は、21歳の頃からすでにサッカー選手のスカウティング事業に従事しており、若くしてその分野の専門家として知られています。
約6年間在籍したユベントスでも、主にスカウティング部門で活躍していました。

 

トニョッツィ氏「私がこのクラブに加わった頃、ユベントスは若手市場において知名度も魅力も低く、若手を積極的に起用したり、移籍金がそれほど高騰していない時期に若手と契約するという方針を採用したりすることはほぼ不可能だった。」

「たしかに、ユベントスは実績のあるベテランを惹きつける力をもつクラブではあったが、未来ある若手が望んで加入するようなクラブとは言いがたかっただろう。」

「しかし、今日では、成長の道を歩みたいと願う若手をも惹きつけるクラブにまで登り詰めた。」
「これには、セカンドチーム(ユベントスNext Gen)のような、イタリアでは考えられなかった斬新で貴重なツールが必要だったんだ。」

 

トニョッツィ氏は、ユベントスがまだNext Gen(旧称ユベントスU23)を創設する以前から「セカンドチームの有用性」にいち早く着目し、ジョヴァンニ・マンナSD(当時)らとともに、Next Genプロジェクトの遂行に欠かせない人物となりました。

 

年間200試合を現地で観戦し、ビデオではそれ以上もの膨大な試合をチェックしていると語るトニョッツィ氏。

彼は、そのキャリアの中で数々の重要な選手を発掘してきました。

ここで、彼のユベントスでの実績を、少し振り返ってみましょう。

 

 

[DFディーン・フイゼン]
吹雪のなか、スペインU16選手権に足を運び、マラガU16でプレーするフイゼンを観て獲得を決断。

 

[FWカイオ・ジョルジ]
2021年の夏、コロナによる厳しい出入国規制があったにもかかわらず、ブラジルに行き、カイオを視察。
当初、許可された滞在期間はわずか5日間だったが、獲得交渉が長引いたため1週間ホテルに隔離され、イタリアに帰国後もJホテルにてひとりで過ごすことに。

 

[FWマティアス・スーレ]
アルゼンチンU12選手権でのベレス対ボカの試合で、初めてスーレを視察。
スーレがユベントスと契約できる年齢になるまで待つ必要があったが、その間にスーレは世代別アルゼンチン代表などで活躍し、10を越えるビッグクラブが獲得を狙う注目株に。
しかし、彼を12歳の頃から追いかけていたトニョッツィ氏は、スーレが注目株に成長した頃にはすでに彼や彼の家族と良好な関係を築き上げており、スーレはヨーロッパに挑戦するにあたってユベントスだけを望んだ。

 

[FWケナン・イルディズ]
バイエルン・ミュンヘンからフリーでイルディズを獲得しようとしていた当時、バイエルンの監督だったハサン・サリハミジッチは、ユーベのDFマタイス・デ・リフトとの契約を成立させるためにトリノを訪れていた。

ユベントスがイルディズの獲得を望んでいることをバイエルン側に知られてしまっては、デ・リフトの移籍交渉や売却額に影響があるかもしれなかった。
そこで、当時有力視されていた「イルディズはバルセロナと契約する」という噂を信じさせるように動き、デ・リフトの売却とイルディズの獲得を平行して進めることができた。

 

[FWアーリング・ハーランド](失敗談)
ザルツブルグが彼を獲得する1年以上も前の2017年11月、トニョッツィ氏はどのビッグクラブよりも早くハーランド獲得の交渉に着手していた。
トニョッツィ氏がユベントスに加入してから最初に接触した案件が、このハーランド獲得交渉だった。

当時ハーランドはノルウェーのモルデというクラブのベンチに座っており、ユベントスは彼を獲得するまであと一歩のところまで来ていた。

しかし、この案件では、ユベントスU19がハーランドの受け入れ先となるはずだったが、U19の投資としてはハーランド獲得費用は高額すぎると判断され、獲得は見送らざるをえなかった。

この出来事は、トニョッツィ氏がユベントスU23(のちのNext Gen)創設を強く決意するきっかけとなった。

 

 

トニョッツィ氏の哲学

トニョッツィ氏は、ユベントスを「トップチームに入ることは簡単ではないが、若い選手が成長するための最高の環境を提供できるクラブだ」と評価しています。

「クラブのビジョンが最優先であることは間違いないが、我々クラブが計画するプロジェクトを若い選手やその関係者にどのように伝えるかが重要だ。」
「若い選手にとって、お金やクラブの名声以上に、毎年の彼らのキャリア構築のステップを詳細に説明することが大切だ。」

上のコメントからも分かるとおり、若い選手への移籍交渉について、トニョッツィ氏は、クラブのネームバリューや金銭的なモチベーションよりも、クラブが彼らのこれからのサッカー人生を真剣に考えているということを、選手やその家族・周囲の人々に正確に伝えることを重視するスカウトマンです。

そして、彼は「才能ある選手たちが『快適』で『安心』できる環境を作ることに尽力している」と強調しています。

データ分析やAIを使った最新の選手分析システムなどの価値を認めながらも、現場からのフィードバックや、選手やその家族と直接会うことの重要性を訴えるトニョッツィ氏。
若くして経験も実績も豊富なこのスカウトマンは、こうした現実的な生の接触が、選手の性格や彼らの育った環境などを理解する上で不可欠だと考えています。

 

 

 

トニョッツィ氏が期待を寄せる次世代の新星

ユベントスで約6年間活躍したトニョッツィ氏は、クラブの未来を担う可能性を秘めた2人の若者の名前をあげています。

2023/24シーズンのユベントスNext Genで8番を着用したMFノンジェ・ジョセフ・ボエンデは、トニョッツィ氏が注目する逸材のひとりです。

ノンジェはトニョッツィ氏がユベントスでスカウトした選手で、現在グラナダSDを務める同氏がローン移籍での獲得を目指しているという有力な噂があります。

ベルギー生まれのノンジェは、コスタリカ人の母とコンゴ人の父を持ち、オランダ語やイタリア語、フランス語、英語など複数の言語を話すことができます。

ユベントスU19では、パオロ・モンテーロ監督から「ダービッツに似ている」と評価されていたこの19歳。

細身ながら、巧みな身体さばきでフィジカルコンタクトも上手く対応し、クリエイティブなプレースタイルはポール・ポグバを彷彿とさせます。

トレーニングに遅刻することが多いですが、それでもユベントスの経営陣は彼に大きな期待を寄せています。

 

 

そして、トニョッツィ氏が特に期待を寄せるもう一人の逸材が、2007年生まれのMFパトリク・マズールです。

おそらく多くの人々にとって初耳の選手かもしれませんが、実は、現在ユベントスU17に所属する選手の中でトップクラスに期待されている注目株です。

マズールは中盤の選手としてテクニック・体格・個性を備えた選手であり、視野の広さとプレーの安定感を武器とするポーランド人のボランチです。

ユベントスでトニョッツィが最後に獲得したのがこのマズールで、2024/25シーズンのユベントスU19の主力候補として、大きな期待が寄せられています。

ノンジェとマズール、みなさん覚えておきましょう!

 

 


 

 

さて、今回はマッテオ・トニョッツィ氏のキャリアと哲学、そして彼が発掘した次世代の逸材をご紹介しました。

トニョッツィ氏のスカウティングに対する深い理解と情熱は、若い才能を開花させる力となっています。

ユベントスからは離れてしまいましたが、これからの彼の活躍にも注目していきたいですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

 

デミチェリス

日本で一番ユベントス・アンダー世代に詳しい人物であり、その豊富な知識と着眼点は世界を見渡しても「類まれ」と言って間違いなし。佐藤健似のイケメンユベンティーノ。

 

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