ユベントスの夏のマーケットを振り返る――獲得と放出、その評価と課題(編集長ミツ)

2024年夏、ユベントスにとって移籍市場は「刷新」と「整理」の両面が同居する特別な期間だった。財政的な制約が続くなかで、クラブはイゴール・トゥドル監督の続投を決定し、ピッチ上のスタイルのみならず経営方針にも大きな変化を求められた。補強のターゲット、放出の判断、そして交渉の舞台裏でクラブの方向性を示したのが、フットボールディレクターのコモッリら首脳陣の動きである。ここでは、今夏のユベントスを獲得と放出の両面から振り返り、その評価を試みたい。

 

首脳陣の立ち振る舞い――コモッリ体制の初動

まず注目すべきは、クラブ経営の中枢を担う首脳陣のスタンスである。財政難にあえぐイタリアのクラブにおいて、ユベントスも例外ではない。欧州全体で放映権収入やスポンサーシップの格差が広がる中、セリエAのクラブはもはや「資金力で上位に並ぶ」ことは難しい。その状況でコモッリらが取った戦略は、「無理にスター選手を追いかけず、年齢構成と戦術的適合性を優先する補強」だった。

例えばランダル・コロ・ムアニの再獲得を模索していたが、PSGとの交渉は財政的に不可能に近い水準まで引き上げられ、最終的に撤退した。ここで大金を投じて無理をするのではなく、現実的にチームの未来を支え得るターゲットに切り替えた点は、従来の「ビッグネーム志向」からの脱却を象徴している。

また、クラブが一貫して強調していたのが「若さ」と「再売却価値」である。投資を単なる戦力補強にとどめず、経営的な資産形成へとつなげようとする意識がはっきり見える。これはモッタのサッカーが求める運動量や柔軟性とも整合しており、現場とフロントの意思疎通が機能していることの表れといえるだろう。

 

 

獲得の側面――計画性と即戦力の両立

今夏の補強で最も注目されたのは、リールから獲得したジョナタン・デイヴィッドである。カナダ代表のストライカーはフリーで加入し、年齢もまだ24歳と伸びしろが大きい。ヴラホヴィッチとの共存や競争はもちろん、戦術的にはモッタの可変システムの中で「前線の流動性」を生み出す重要な存在と目される。フリーでの獲得は財政的にも理想的で、クラブの戦略が結実した典型例といえる。

 

続いて、同じくリールから加入したエドン・ジェグローヴァ。ウインガーとしての推進力と創造性は、ここ数年ユベントスに欠けていた「サイドからの仕掛け」を補完するものだ。デイヴィッドとの再共演という点でも、戦術浸透がスムーズに進む可能性が高い。彼もまた20代前半で、再売却価値を意識した補強といえる。

さらに中盤では、ヒュルマンド獲得の噂もあったが最終的には成立しなかった。代わりに、既存戦力のロカテッリやテュラムを軸にしつつ、トゥドルが若手を育てる路線が確認できる。むしろ大型補強を一気に進めるのではなく、段階的にチームを作り替える「中期計画」が優先された印象だ。

総じて、獲得は派手さを欠いたが、計画性と即戦力を兼ね備えた実質的な補強であった。欧州の舞台で勝ち抜くにはまだ厚みが足りないが、国内での競争力を高める上では十分な成果といえる。

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