サイドハーフ
この冬のマーケットにおいて、全くといっていいほど獲得も放出も噂に挙がらないのがサイドハーフだ。
現在、ユベントスはこのポジションに「ユルディス、コンセイソン、ムバングラ、ニコ・ゴンザレス、ティモシー・ウェア」の5選手を擁している。ユルディスとムバングラは今後のユベントスを背負って立つ新星であり、コンセイソンとニコ・ゴンザレスは今シーズン開幕に合わせて加入したばかり。昨シーズンは新加入ながらパッとしなかったウェアも、ティアゴ・モッタの下で別人のような活躍を見せており、誰もが「放出する理由が見当たらない」と考えている。それゆえに、獲得の噂もまったく浮上していない状況だ。
最大のサプライズ
その中でも、わずかに放出の噂が出たのがムバングラだ。今シーズンのユベントスにおける「最大のサプライズ」とも言える21歳のベルギー人ウィンガーは、開幕戦でトップチーム初先発・初ゴールを挙げると、勝負どころでゴールを重ね、いまや「準レギュラー」と言える立ち位置を確立。もはや、ムバングラを控え選手と見ているファンはいないはずだ。
その活躍ぶりがヨーロッパのクラブから注目を集め、1年前に25万ユーロだった評価額は、現在800万ユーロにまで上昇。しかし、ユベントスがこの額でムバングラを放出することはなく、今後さらなる価値の向上を見込んでいる可能性が高い。
ユルディスの葛藤
今回、名前が挙がった中で起用法が割れているのが、新背番号10を背負うケナン・ユルディスだ。トゥーン・コープマイネルスの加入が決まっていなかったシーズン開幕戦でトップ下を任されていたのを覚えているファンもいるかもしれないが、このトルコ人アタッカーは左サイドを本職としながらも、その類まれな才能が認められる形で、今シーズンはトップ下や右ワイドでも起用されている。
現在、ファンの間でもユルディスの適性ポジションについて議論が続いているが、それは「絶対的な存在になっていない」ことの裏返しとも言える。ユベントスのエースは「使い勝手の良いユーティリティプレーヤー」では許されず、例えばアレッサンドロ・デル・ピエーロが2トップの一角に君臨し、パウロ・ディバラがトップ下で最も輝いたように、エースは自身の確固たるポジションを確立することが求められる。
個人的には4-4-2の一角に配置して自由を与えることでユルディスが最も輝くと考えているが、モッタはこのまま複数のポジションで起用し続けるのか、それともユルディス自身が理想のポジションを主張していくのか、今後の展開が注目される。
サイドを任せることのできるプレーメーカー
現在のユベントスにはサイドから仕掛ける選手は揃っているが、サイドで起点となる選手がいない。確かにコンセイソンは右ワイドで時間を作る動きを見せるが、それは「仕掛けられない時の二次的な選択肢」に過ぎず、ビルドアップには関与していない。
今シーズンのモッタは4-2-3-1システムを採用しており、両ワイドに「サイドアタッカー」を配置するのは理に適っている。しかし、両サイドバックが積極的に攻撃参加した試合は指を数えるほどであり、その一因として「サイドハーフが溜めを作れない」点が挙げられる。例えば、サヴォーナは2ゴールを決めているものの、彼が効果的なオーバーラップを見せたシーンはほとんど記憶にない。
オーバーラップの少なさにはシステムの影響もあるが、サイドバックの押し上げが攻撃に厚みをもたらすことは間違いない。そのため、「サイドにプレーメーカータイプの選手を1人配置する」というのも一案ではないだろうか。
かつて、1990年代後半のユベントス黄金期には、ヴラジミール・ユーゴビッチというプレーメーカーが、4-4-2(中盤ダイヤモンド)の左サイドを担い、ゲームメーカーのジダンを支えていた。現在のユベントスも「サイドを担当できるプレーメーカー」を獲得すれば、攻撃に落ち着きを与えられるかもしれない。
まとめ
現状、これだけの選手が揃っていれば、冬のマーケットで補強に動く必要はなく、限られた資金をディフェンダーやアタッカーの補強に充てるべきだ。しかし、来シーズン、モッタのチームがさらなる高みを目指すためには、サイドハーフのテコ入れが必要となる。
特に、ユーゴビッチのようなサッカーIQの高いミッドフィルダーがチームに加わることで、攻撃の安定感が増す可能性がある。今後の補強戦略に注目したい。
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次回は、コロ・ムアニを獲得したアタッカーについて書かせて頂く。
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