今シーズン、モッタ監督招聘に合わせて大型補強を敢行したユベントス。契約満了となったラビオと契約更新に至らなかったキエーザの退団は「致し方なし」だが、それ以外ではベテランのデ・シリオ、ルガーニ、コスティッチをそれぞれローンで出し、若手有望株といわれたマティアス・スーレ、フイセン、イリング、バレネチェア、モイズ・キーンを完全移籍で放出して換金するなど、余裕のある立ち振る舞いから選手層については盤石かと思われた。
しかし、相次ぐ怪我人によりチームは窮地に立たされることに。特に守備の要であるブレーメルが前十字靭帯損傷により長期離脱となったことは大きなダメージを与え、ファンの中からはルガーニやティアゴ・ジャロのローンバックを求める声が挙がるほど。更に"職人"アレク・ミリクの復帰が見通せない中、ユベントスは冬の補強必至の状況に立たされている。
センターバック
フットボール・ディレクターのジュントリが早いタイミングで補強を公言したのはディフェンスラインだ。前述のブレーメルに続き、センターバックも兼務すると伝えられていたフアン・カバルはそれを証明することなく、ブレーメルと同じく前十字靭帯損傷によりシーズン中の復帰は絶望的となった。
開幕早々に2人のレギュラーディフェンダーを失ったユベントスだが、そこにキャプテンであるダニーロが冬のマーケットでチームを離れることが確実となっている。それによりセンターバックの補強は必須となり、これまでにシュクリニアル(PSG)、ハンツコ(フェイエノールト)、アントニオ・シウヴァ(ベンフィカ)、キヴィオル(アーセナル)、アラウホ(バルセロナ)、トモリ(ミラン)といった実力派センターバックの名前があがるが、いまだ確度の高いニュースは届いていない。
PSGでルイス・エンリケの構想外となるシュクリニアルに関しては、セリエAでの実績も申し分なく(2017-2023までインテルでプレー)、私の中でもオススメであったもののトルコ方面への移籍が確実視される状況。しかし、シュクリニアルは「噂先行」の部分もあったので、ユベントスは実戦から離れていることを危惧し、早々に獲得レースから撤退していたかもしれない。
ハンツコ(27)、アントニオ・シウヴァ(21)とアラウホ(25)は年齢的にも実力的に申し分なく、今日の明日にでも欲しい存在だ。それだけに各所属クラブは完全移籍での取り引きを望んでおり、しかしこの3選手についた3500万ユーロ(ハンツコ)、3800万ユーロ(シウヴァ)、5500万ユーロ(アラウホ)といった多額の移籍金をユベントスが支払えるはずはなく、なんとかローン移籍での交渉を進めているようだが、当然ながら難航している。
最後にスペツィア時代にモッタと時間を共にしたキヴィオルについては、引き続きアーセナルで満足のいく出場機会を与えられておらず、プレミアリーグでは直近5試合(第16節~20節)の全てをベンチで過ごしている。
監督のアルテタの構想外となっていることは明らかであり、そして2年連続でこの扱いを受けるキヴィオルが「環境を変えたい」と考えたとしても不思議ではない。それだけにアーセナルが移籍フォーマットについて譲歩する可能性も高く、モッタの中に残るスペツィア時代の印象が悪くないのであれば、一気に獲得に動いてもよいのではないか、いや土台を固めるためにも"一気に獲得に動くべき"だと私は考えている。キヴィオルについては「左利き」であるのも魅力のひとつだ。
サイドバック
フアン・カバルが長期離脱を強いられたことで、最も影響を受けたのが「アンドレア・カンビアソの処遇」だ。
この稀代のユーティリティ・プレーヤーは、利き足の左サイドバックのみならず、右サイドでも同レベルのパフォーマンスを披露しており、またひとつ前のサイドハーフもこなすことでモッタに戦術と選択の幅を与えてきた。しかし、カバルの負傷に加えてダニーロが構想外となったことで、左サイドバックは「カンビアソ一本」となっている。若手のロウヒの成長にも期待が寄せられるが、まだピッチに安心して送り出すレベルには達していない。
現在は中盤のマッケニーがスクランブル的に左サイドバックを任され、及第点となるプレーを見せているが、しかしこれも「小手先」にすぎなく、そのうち対戦相手に対策を練られる(左サイドを狙い撃ちされる)のは明らかである。
右サイドはヴィトーリア・ギマランイス(ポルトガルリーグ)に所属するアルベルト・コスタ獲得が間近と伝えられているが、左サイドの補強については全く噂も届かない状況。モッタはこのままカンビアーソを軸にマッケニーで保険をかけるつもりかもしれないが、それが最終的にモッタ自身の首を絞めることになると気付いているだろうか。世界有数のユーティリティプレーヤーを左サイドに固定することの代償は、果てしなく大きなものになると私は断言することができる。
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次回は、ファジョーリとドウグラス・ルイスの動向に注目が集まるミッドフィルダーについて書かせて頂く予定だ。
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