ニコロ・サヴォーナのすべて(デミチェリス)

皆さん、お久しぶりです!デミチェリスです。

「イタリア史上屈指のリベロ」と評価されたガエターノ・シレアは、ユベントスで約550試合に出場したレジェンド選手のひとり。
クラブや代表に多くのトロフィーをもたらした彼は、ピッチの内外を問わず模範的な人格者としても知られていました。
イタリアでは、献身的なスポーツマンシップを見せた選手に、フェアプレー賞として彼の名が冠された「ガエターノ・シレア賞」が贈られます。

今年3月、当時ユベントスNext Genに所属していたDFニコロ・サヴォーナに、この名誉あるガエターノ・シレア賞が贈られました。
受賞時のインタビューでは、ユベントスのトップチームでプレーすることへの意欲を見せていたサヴォーナ。
新監督チアゴ・モッタに惚れ込まれ出場機会を勝ち取った今季では、これまで公式戦14試合に出場しており、この数字はヴラホヴィッチ、カンビアーゾ、イルディズの次に多い記録です(2024年11月20日時点)。
本日は、ここ数ヶ月間で飛躍的に注目されるようになった、21歳のニコロ・サヴォーナを惜しみなくご紹介いたします!

 

 

ユーベ・アカデミーでの歩み

2003年3月19日、イタリア北西部に位置するヴァッレ・ダオスタ州の州都アオスタに生まれたニコロ・サヴォーナは、5歳の頃からボールを蹴るように。
家から数メートルの距離にサッカーコートがあり、地元のアイグレヴィルというチームでキャリアをスタートさせます。
その3年後、ニコルッシ・カヴィーリャを発掘したマルコ・ジョヴィナッツォ氏が、サヴォーナに「ユベントスのトライアウトを受けてほしい」と電話で直接オファー。
彼の物語は、この一本の電話から始まりました。

州名にある「ヴァッレ」とは、イタリア語で「渓谷」の意。
サヴォーナは、ヴァッレ・ダオスタ州の山間部にある自宅から、週3日トリノの練習場に通っていました。
子どもにとってその道のりは楽ではなかったと、彼の父フラヴィオは語っています。

「ユベントスのバスが15時30分にアオスタまで迎えに来て、息子を乗せ、帰宅は22時30分くらいだったよ。」

「夕食は、いつもバスの中で済ませてきていたね。」

「ニコロが14歳になってからは、私たちのもとを離れて、全寮制の学校に入ったんだ。」

 

家の近くにスキー場があったことから、幼少期はスキーにも没頭していたサヴォーナ。
イタリア代表に初招集された際のインタビューで、次のように当時を振り返っています。

「子どもの頃はスキーもしていて、スラロームで何度か大会に参加したこともあるよ。」

「10歳のときにサッカーかスキーどちらを続けるか選ばなければならず、サッカーを選んだのさ。」

 

今でこそ、192cm の高身長からなる当たり負けないフィジカルや堅実な守備スキルで、セリエAの舞台でも互角に戦えているニコロ・サヴォーナ。
しかし、10代半ばの当時は、肉体的な成長が同期より遅れていたことや、自身の環境の変化もあり、ユーベ下部組織でほとんどプレーしない期間が続きました。

 

 

心機一転のローン移籍

それでも彼を諦めなかったユベントスは、2020/21シーズン、U19カテゴリーの1部リーグに所属するSPAL U19にローン移籍させました。
当時SPAL U19のスカウト部長を務めていたジャコモ・ラウリーノ氏は、現在ユベントスでプレーするこの青年を『真面目な努力家』と回想しています。

「ニコロを獲得できたことは、私たちのクラブにとっても賢い判断だったと思う。」

「私たちは彼を完全に獲得することを望んでいたが、ユベントスは一時的なローン移籍を許可しただけだった。」

「加入当初は、すでにセリエAデビューを果たしていた年上のRBヤクブ・イスクラからポジションを奪えずにいたね。」

「ただ、ニコロは真面目で献身的なところが際立っていて、確かな技術を持っていることは明白だった。」

「シーズン後半にはイスクラから完全にスタメンの座を勝ち取り、自分の価値を証明することに成功したんだ。」

「ニコロは決して“運命の選手”ではなかったが、間違いなく“真面目な努力家”ではあったのさ。」

 

 

ユベントスに復帰、そしてトップチームへ

経験と自信を身に付けてユーベに戻ったサヴォーナは、2021/22シーズン、ユーベU19の主力としてプレー。
リーグ戦やUEFAユースリーグでのチームの好成績に、大きく貢献しました。
翌年からはBチームでもプレーするようになり、2022年11月30日、セリエCグループA第16節フェラルピサロ戦でプロデビューを果たします。

この時期から、先輩サイドバックであるトンマーゾ・バルビエーリの後釜として育てられてきたサヴォーナ。
決して派手な選手ではないため話題になることこそ少なかったものの、着実にBチームで経験を積み、実力を伸ばしていきます。
そして、そのフィジカルや堅実な守備力、高い献身性がチアゴ・モッタ新監督に評価され、2024/25シーズンのセリエA第1節コモ戦にて、ついにトップチームデビューを果たしました。

父フラヴィオによれば、サヴォーナは幼少期よりユベンティーノだったそう。

「ニコロは幼い頃からユベントスのファンで、ユーベが負ければ、赤ん坊のように泣いていたね。」

「ダニエル・アウヴェスに憧れていたが、カンセロやテオ・エルナンデスのこともよく研究していた。」

「ロナウドと一緒に練習するようになって、このクラブの偉大さを痛感していたよ。」

 

 

謙虚な青年

彼の印象を尋ねられたモッタ監督も「内気で控えめ」と答えたように、献身的で謙虚な性格が見てとれるニコロ・サヴォーナ。
Jカレッジ(ユベントスが設立・開校したスポーツを中心的に扱う教育施設)を卒業したこの青年は、プロキャリアと両立して大学のスポーツ・マネジメント学部に進学しました。
「勉強することで精神を鍛えられるし、サッカーへの深い理解にも繋がるんだ」と語り、オンライン講義を受けて勉強に励んでいます。

また、ここ最近の急激な注目にも、冷静に対応しているこの選手。

「外出中に『写真を撮って』と頼まれることは、いつだって嬉しいよ。」

「子どもの頃は、自分が写真を頼む側だったからね。」

「ファンとの交流を通して、自分がどのような世界に足を踏み込んでいるのか実感するんだ。」

謙虚な青年、サヴォーナの言葉からは、やはりプロ選手に必要な平静さが伝わってきます。

 

 

例のごとく、今季も野戦病院と化しているユベントス。
チームのピンチを自身のチャンスに、当たり負けしないフィジカルや積極的な守備意識、ミスの少ない安定したプレーで、自らの価値を証明してほしいところです。

デミチェリス

日本で一番ユベントス・アンダー世代に詳しい人物であり、その豊富な知識と着眼点は世界を見渡しても「類まれ」と言って間違いなし。佐藤健似のイケメンユベンティーノ。

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