【ブログ】ベルナルデスキを諦めない
ボクは1990年代半ばからユベントスが気になって来ていて、シーズン通して見届けたのが1996-97シーズン。ちょうどユベントスの主役がロベルト・バッジョからアッレサンドロ・デル・ピエーロに移行した頃だ。
それから紆余曲折ありながらも(?)15年くらいは応援し続けて、2012年過ぎに子供が産まれたのとプレミアリーグに少しだけうつつを抜かしたのを機に(笑)、ユベントスから離れる事に。
それから時が経ち、縁あって2017-18シーズンからユベントスに戻る事になった訳だが、15年の時と共に当時の選手たちはチームを去っており、顔見知りはブッフォン、キエッリーニ 、マルキジオの3選手のみ。お恥ずかしながら「パウロ・ディバラ」の名前も知らなかった程だ。
そしてボクが出戻った2017-18シーズン、"同期"としてユベントスに加入したのが、フェデリコ・ベルナルデスキだ。
当然ながらベルナルデスキの存在は知らず。ただ風の便りによると「ファンタジスタ系」であり、確かにフィオレンティーナ時代のプレーを見ると、その前評判もまんざら見当違いではなさそうだった。デル・ピエーロに魅了されてユベンティーニになったボクとしては、ベルナルデスキのプレーを見るのが楽しみで仕方なかった。
しかしその前にボクを魅了したのはパウロ・ディバラだった。ユベントスの新背番号10は開幕から4試合で2度のハットトリックを記録し、そして6節を終えた時には10ゴールに達していた。ボクは「デル・ピエーロの再来だ!」と心を躍らせた。
一方、同期のベルナルデスキはと言うと、アッレグリと言う監督は新加入選手に対しては試運転をさせながら様子を見るタイプのようで、ユベントスデビューを飾ったのが第3節で、初スタメンに至っては第7節まで待たされる事になる。
結局このシーズン、ベルナルデスキは31試合に出場したものの、スタメンはわずかに9回。大きなインパクトを残す事なくユベントス移籍初年度を終える事になった。
花が開いたのは翌2018-19シーズン。ユベントスはビッグイヤーを獲得すべく、"あの"クリスティアーノ・ロナウドを獲得したのだ。ロナウド加入は世界に大きな衝撃を与えると同時に、ユベンティーニは両手放しで世界No.1ストライカーを迎え入れた。「悲願のチャンピオンズリーグ優勝が叶う」、誰もがそう思った。誰もが背番号7に期待を寄せた。しかし、その裏でパウロ・ディバラは主演から助演に追いやられる事になった。仕方がない、これがフットボールの世界だ。
そして、クラブのこのシフトチェンジに合わせて存在感を示す選手が出てきた。そうだ、フェデリコ・ベルナルデスキだ。
ロナウドに触発されたのかは分からないが、ベルナルデスキは繊細なファンタジスタ系から脱却し、筋肉の鎧をまとうフィジカル系ストライカーに変貌を遂げた(その理由はいまだに謎だ)。
ロナウド加入に合わせてアッレグリはシステムを4-3-3に舵を切る事になったが、その右ワイドを任されたベルナルデスキは、豊富な運動量と力強いプレーでアッレグリの信頼を勝ち取った。それはこのシーズン、39試合の出場でそのうちスタメン22回と言う数字が物語っている。飛躍の一年となった。
しかしアッレグリがチームを去り、新指揮官にサッリを迎えた2019-20シーズン。ベルナルデスキは厳しい立場に立たされる事になる。
サッリが敷いた攻撃時に4-3-3、守備時4-4-2の可変式システムの肝となる右ウィングを任されたベルナルデスキだが、あまりの激務にコンディションを崩し、全くと言って良いほど見せ場を作れなかった。38試合に出場してスタメン22回と言う数字から見ても分かる通り、サッリがベルナルデスキを重宝していた事は間違いなかった。しかし、それだけ出場して2ゴール・3アシストと言う記録にファンは納得が行かず、シーズン終盤にはベルナルデスキに向けて厳しい声が届くようになって行った。それを見て「理不尽だなだな」と思った事をよく覚えている。
サッリが一年でチームを去った後、ユベントスはレジェンドであるアンドレア・ピルロを監督に招聘したものの、ベルナルデスキは確固たる地位を掴む事は出来なかった。これはボクの見立てだが、サッリ政権下においてハードワークを続けた事で、完全に自分のフォームを崩してしまったような気がした。
なかなか結果の出ないベルナルデスキに対して、ピルロも頭を悩ませた。インサイドハーフを任せたり、サイドバックで試したりもしたが、むしろ状況は悪くなる一方で、仕舞いにはファンからも「ベルナルデスキは終わった」とも揶揄される程になった。そしてシーズン終盤には「放出候補の最右翼」とさえ言われるようになった。
そこにアッレグリが戻って来た。
ベルナルデスキは当然のように残留を果たす事になった。
迎えた2021-22シーズン。ベルナルデスキは輝きを取り戻した。いや、「取り戻した」ではなく「輝きが増した」と表現すべきかもしれない。
残念ながらシーズン途中で怪我を負ってしまい、戦列から離れる時間が長くなってしまったものの、しかしベルナルデスキの真の実力を知らしめるには、十分な時間だったと言えるはずだ。力強さの中に繊細さがあり、そして自信に満ち溢れている。ボクの目にはそんな風に映っていた。アトレティコ戦の夜、現地の実況が「スーペル・ベルナルデスキ!スーペル・ベルナルデスキ!スーペル・ベルナルデスキ!」と3度に渡り連呼した日を思い出した。
今シーズン終了後、ベルナルデスキはユベントスとの契約が満了となるが、いまだ更新されておらず、報道を見る限りチームを離れる可能性は低くないとボクは捉えている。
プロの世界である。もちろん年俸を含めた諸条件は選手にとって大切なものだ。しかし、それと同じくらい「どこでプレーするか」も大切であり、「どこで」の次は「誰と」、そして「誰と」の中にはサポーターも含まれているとボクは考えている。
イタリアには「同期」なんて考えはないだろう。そもそもプロスポーツの世界には同期もへったくれもないし、むしろ全員がライバル。もし、その手の意識があったとしてもそれは選手間のものである、当然だ。
しかしボクは2017-18シーズンにユベントスに加入したベルナルデスキを同期だと思っている。なんならボクは出戻りだから、ボクの方がユベントス歴は長いから先輩かもしれないが、チームから離れていた負い目もあるから「同期」にしておこう。
この3シーズン、ボクはずっとずっと言い続けていた台詞(セリフ)がある。
『ベルナルデスキを諦めない』
「諦めたら試合はそこで終了ですよ」って昔の偉いひとがそんな事を口にしていたと覚えているけど、それが本当だったと、耳にしてから25年以上経ってベルナルデスキが気付かせてくれる事になった。
"同期"として、ユベントスのベルナルデスキを応援し続けたいと切に願っている。
そうなる事をボクは諦めていない。